
花はほぼまんまる<撮影:2014年4月>

姫の唇のような紅 <撮影:2007年5月>

山肌を染めるアカヤシオ <撮影:2007年5月>
アカヤシオは、私にとって大事な思い出の花である。
おととし亡くなった山の師匠に鳴神山に連れて行ってもらったのが、私とアカヤシオとの最初の出会いであった。まだほとんど緑のない(山では)早春の季節に、山肌をピンクに染めた花の美しかったこと。
一つ一つの花も大振りで、存在感は抜群だ。そのうえ蕾はいっそう赤が濃くて官能的でさえある。鳴神山とアカヤシオを歌舞伎の鳴神上人と絶世の美女・雲の絶間姫になぞらえて一人悦に入っていた自分のことを、いまでもくっきりと思い出すことができる。
その後も、季節になるとアカヤシオに会いたくて、師匠に頼んでいくつものアカヤシオの山を案内してもらった。もう師匠と一緒に行くことはできないが、今年もまた会いに行きたいものである。
栃木県の県花だが、アカギツツジという別名があるほど、群馬県にも産地は多い。岩でごつごつしているような山肌を好むようで、登山道から遠く離れたところでも咲いていることがあり、これを遠くから眺めるのもなかなか趣がある。
<参考文献>
『山渓ハンディ図鑑5 樹に咲く花』(写真/茂木透 解説/城川・高橋・中川ほか 山と渓谷社)
<記事 2015年4月5日>