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ホラシノブ    洞忍   ホングウシダ科ホラシノブ属

ホラシノブ
紅葉しているものもある<撮影:2015年3月>

ホラシノブ裏面
裏面に爪のような胞子嚢群がある <撮影:2015年2月>

崖をよじ登って出会う

ふだんからよく行く低山の帰り道であった。いつもの登山道に並行して別の道があるので、たまには気分を変えてみようかとそちらに向かった。ほとんど人手のはいっていない雑木林の向こうに4〜5メートルほどの小さな崖地がある。ヤマイタチシダやベニシダらしきものがちらちら見える。
 とくに興味をひかれるでもなく通り過ぎようとしたら、「あれ、さっき見たシダはなんだったろう」とやけに気になった。これまでに見たような気もするし、見たことがなかったもののようにも思える。引き返して、あらためて雑木林を透かして見た。
 どうも、見たことのないもののようだ。倒木や刺のある枝を乗り越えて崖に近づいてみる。自分の背より高いところにあって手が届かない。ざらざらと足元が崩れる崖にとりついてなんとか写真を撮り、標本のために1葉だけ採集してきた。
 これがホラシノブと私との出会いであった。
 しかし、その時点では名前もわからなかった。その後、図鑑類をあたり、専門家に写真を送ってみてもらってようやく「ホラシノブ」にたどり着いたのである。

群馬県での発見例は少ない

ホラシノブは、全国的には特に珍しいものではないのだが、比較的暖かいところに生育しているので、群馬県では発見例が少ない。県東部の植物に相当詳しいS先生に標本を見せたところ、群馬県内のものは初めて見たと驚いておられた。県立自然史博物館にも標本は2点しかないそうである。
 下の写真でもお分かりのように、葉の裂片(これ以上は分裂しない葉の最終単位)はくさび形で、裏側の先端部にはまるで爪でもあるように見える。ここが胞子の入れ物になっている。羽片は混んでおらず、向こう側が透けて見えるようで、さわやかな感じがする。
 どこから、どういう形で胞子が運ばれ、この地に根付くことができたのか。そういうことを想像するのも楽しいものだ。

<参考文献>
『日本の野生植物 シダ』(岩槻邦男編 平凡社)
『シダハンドブック』(北川淑子著・林将之写真 文一総合出版)

<記事 2015年3月15日>

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