
無性芽から子どものシダが… <撮影:2016年11月>

全体像 <撮影:2016年11月>

刺のような毛 <撮影:2016年11月>
ホソバイヌワラビというのは、前々から何となく気になっていたシダである。多分これではないかと見当をつけたことはあったのだが、確信をもってピックアップできる状況になくて、ずっともやもやしていたのだ。
先日、県立自然史博物館の「大人の自然史倶楽部」を受講した。毎年ある企画で、内容は年によって異なる。今年はシダコースだったので、大喜びで申し込んだ。とびとびの3日間にまたがる日程で、座学とフィールドワークがある。募集定員は6人とまさに理想的な少人数学級。観察もじっくりできるし、質問も遠慮なくできるのが本当にありがたい。
で、その最終日、やや薄暗くて湿っぽい里山の森でシダの観察をしていた時のこと。受講生のIさんが「これ見て!」と声を上げたので近づいたところ、無性芽が立派に発達して、まさに「子どものシダ」を葉先に展開しているシダがあった。
これこそ、ホソバイヌワラビの大きな特徴。これまで、そういうシダであることは図鑑で知っていたが、現実にそれを目にすると感動もひとしおである。夢中で何枚も写真を撮り、1枚の葉を標本用に採集してきた。
ホソバイヌワラビのもう一つの特徴は、小羽片の羽軸の表面に刺のような(痛くはない)毛をツンと出すこと。これもその場できっちり確認。これで、このシダにまとわりついていたもやもやはすっきりした。これからはなんとかホソバイヌワラビを同定することができる気がする。
なお、ホソバというものの、仲間のイヌワラビなどから比べると、葉身はずっと大きく発達し、幅も広い。なので、ホソバという名にはやや違和感があるのだが、どうも葉の切れ込みが細かいことが命名の理由のように思える。ホソバナライシダなどとも共通するシダ屋さんの感性の問題かもしれない。
<参考文献>
「大阪南部の自然 シダ植物」(Website)
『日本の野生植物 シダ』(岩槻邦男編 平凡社)
<記事 2016年11月9日>