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 カタクリ    片栗   ユリ科カタクリ属

タデスミレ
花 <撮影:2010年4月>

タデスミレ
花の時の葉は2枚 <撮影:2013年3月>

タデスミレ
実生の葉 <撮影:2012年3月>

タデスミレ
数年たった葉 <撮影:2014年3月>

タデスミレ
果実。まもなく地上から姿を消す。 <撮影:2013年5月>

別名カタカゴ。植物関係の本やウェブではおよそ取り上げていないものはないくらい、すばらしい写真もあふれているし、解説もたくさんある。だから、いまさら私が何かを書くのもおこがましいかと思っていたのだが、ここ2〜3年で何人かの人たちにカタクリの説明をした経験からすると、人気の割には詳しい生態などは知られていないようなので、これまで学んできたことを、多少書いておきたい。

地上にいるのはわずか2カ月

カタクリはセツブンソウやフクジュソウなどとともに春植物(スプリング・エフェメラル)と呼ばれている。
 広葉樹林の下で、まだ木々が葉をつけないうちに葉をだし、花を咲かせ、種子をつくる。木々の葉が茂り太陽の光が届きにくくなる頃には、地上部(花や葉)は姿を消し、栄養を蓄えた地下の鱗茎で来年の春を待つ。なので、地上に姿を現しているのは、1年の内わずか2カ月程度なのである。

種子から7年ぐらいで開花

カタクリはふたつのサイクルで増殖する。
 その一つは、種子からの繁殖。前年の春の終わりに地上に落ちた種は、翌年の春先に芽生え、糸のように細い葉を出す。その葉で栄養を作り出し、土の中の小さな鱗茎にそれを蓄えて、間もなく枯れてしまう。その翌年は、この鱗茎からもう少し大きな葉をだす。その葉が、また栄養を作り、鱗茎に貯蔵して枯れる。
 こうして年々、鱗茎が少しずつ大きくなり、葉もだんだん大きなものが出るようになる。
 それを7〜8年繰り返してしっかりした鱗茎ができると、ようやくカタクリの花が咲く。その時は葉も立派で、必ず2枚になっている。
 そして、その花が作り出した種子は、そのまま地上に落ちたり、アリによって遠くに運ばれたりして、そこからまた新しい芽を出すのだ。

大人の株は10数年、花をつける

もう一つの増殖のサイクルは、鱗茎が担う。花をつけるようになったカタクリは、地上部が枯れた後も鱗茎は生きて、翌年また葉を出し、花を咲かせる。これを10数年、繰り返す。こちらはいわゆるクローンのようなものだが、その花が受精して種をつくれば、また次の世代のカタクリが生まれてくることになる。ということで、種子から生まれた1株のカタクリは、20年以上生きるといわれている。
 ただ、毎年順調に花をつけるかというと、そうでもないようだ。花の展開と種子の生産には大きなエネルギーを必要とするので、それまでに鱗茎にたくわえていた栄養のほとんどを使ってしまうらしい。そうなると、その年の葉が十分に栄養を作り出し、貯蔵することができなければ翌年は花を咲かせることはできず、また小さな葉から徐々に栄養を蓄える道に戻らざるを得ないようだ。
 誰もが魅せられる美しい花姿も、実は、個の生存と種の存続のための壮絶なたたかいの一過程なのだ。

<参考文献>
『Newton 植物の世界』第1号(監修/河野昭一 教育社)


<記事 2016年4月6日>

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