柊老人のほろ酔い人生 > 植物との出会いの部屋 > キタマムシグサ

キタマムシグサ  北蝮草  サトイモ科テンナンショウ属

キタマムシグサ
初めて見たキタマムシグサ <撮影:2014年5月>

キタマムシグサ
山の中腹にもあった <撮影:2016年5月>

キタマムシグサ
半透明の白条が数本走る <撮影:2016年5月>

いわゆるマムシグサ(テンナンショウ属)の分類については、いまだに学者の間で説が異なっており、これが通説と言えるような状況が作られていないようである。
 まあ、学者にすればそう簡単に自説を撤回したり、折衷したりするのは矜持が許さないのだろうが、学説を頼りに分類をしている素人にとっては、この現状は実に悩ましい。
 見解の激しく異なるものについては、とりあえず、〇〇図鑑によれば、とか、○○氏の説に従って、とかいって区別をつけるしかないのだが、その説もものによってはごく簡潔なことしか書いてなくて、同定の決め手がわからないこともある。
 で、ずぶの素人の私としては、議論が分かれている種についてはできるだけ触れずに、それほど見解に差がないものを同定して、あとは適当にごまかしているのが現状である。

 キタマムシグサについては、コウライテンナンショウのうち、「分布域(北海道・本州・九州、朝鮮半島・中国・ロシア)の北部や山地上部にはえるもの」について、「キタマムシグサとして区別する見解がある」(改訂新版「日本の植物」平凡社)とややあいまいに記述する図鑑(邑田説)もあるが、「一般にコウライテンナンショウと呼ばれているが、朝鮮半島のものとは違うからキタマムシグサと呼ぶ」(芹沢説)と明快に独立種として扱う見解もある。ただ、芹沢説はきちんとした学術論文が発表されてないのか、Yリストでは採用されていない。こういうものは、今後の研究に注目し続けるしかないのだろう。

 キタマムシグサは、私がまだ暗中模索でテンナンショウ属を観察していた時(いまだに霧の中にいるようなものだが…)、ある山の湖畔ではじめて見たもので、植物観察の大師匠(おおししょう)であるM氏に教えていただいて名前を知った植物である。そのときに教えられたのが「キタマムシグサ」であったから、学説の議論とは別に、個人的な思い入れの深い花なのだ。
 ぽこっと盛り上がった苞の舷部(帽子のように見えるところ)、そして、そこに走る白条は太くて、しかも半透明に透き通っている。ここに独特の美しさがある。
 キタマムシグサは、最初に見た山の湖畔のように、やや特別な場所にあるものと思い込んでいたのだが、その後、別の山の上部や、中腹の森の中などでも見るようになり、(私の観察が間違っていなければ)とくに珍しい花ではなかった。そのことを認識できたのは、ようやく今年になってからであるが。それでも、この花に対する特別な思いが薄れることはない。

<参考文献>
『改訂新版 日本の野生植物』(平凡社)

<記事 2016年5月28日>

#