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キツリフネ   黄釣舟   ツリフネソウ科ツリフネソウ属

キツリフネの花
鮮やかな黄色の花が葉の下に<撮影:2014年6月> キツリフネ
横。上下の関係が逆転<撮影:2014年6月> キツリフネ
裏。ギュッと締め付けている<撮影:2014年6月> キツリフネ
裏。何があっても離さない<撮影:2014年6月>

形はツリフネソウによく似ているが…

花の色はその名の通り黄色である。形はツリフネソウによく似ているが、ツリフネソウの花の距がくるっと巻いているのに対し、キツリフネは、やや曲がっているものの巻き込むことはない。
 花の咲く位置も違う。ツリフネソウが葉より高く花柄を伸ばして咲くのに対して、キツリフネは葉の陰に隠れるように咲く。
 だからといって、決して地味ではない。長さ3〜4センチと大柄で鮮烈な黄色、しかも、たいてい群れて咲いているので、遠目にもかなり目立つ。

葉と花序軸の不思議な関係

キツリフネの花は葉の下に咲いているので、私はこれまで、葉のすぐ下から花序軸が出て、その先に花がついているものと思い込んでいた。
 図鑑などでも、「花序は葉腋(葉のわき)から下垂し、…花を吊り下げる」というような表現が普通なので、なんとなく葉の下側ないしは横から出ているものと思っていたのだ。
 ところが、あらためてよく観察してみると、花序軸はなんと葉柄の上側(根と反対方向)から伸びている。そしてその軸が、葉に無理やり抑えられるような形で、葉の下側に回っているのだ。
 「無理やり」という表現は、決して誇張ではない。写真で見ていただけるように、葉身の下部に歯牙というか、蔓というか、細長いものが出て、それと葉の本体の一部が一緒になって、まるで人間の手でつかむように花序軸を下側に押さえつけている。
 「俺の上に行くんじゃない。光合成の邪魔だろう」ということなのかどうかは全く定かでないが、何もしなくても花の重みで葉より下に行くように思えるのに、これはどうしたことだろう。

謎が謎を呼ぶ

上記の事実に気づいてから、私の手持ちの図鑑や図書館にある図鑑・解説書類をあたってみたが、この花序軸と葉の関係に着目した説明を見つけることはできなかった。
 権威ある牧野植物図鑑の絵を見ても、花序軸はたしかに葉柄の上側からでて、葉の下に下がっているが、それは自然にそうなっているという感じで、葉が花序軸を押さえつけている姿は描写されていない。
 牧野富太郎が観察した時代には、これがキツリフネの当たり前の姿だったのか。
 私が見ているのは、キツリフネの進化した姿なのか。
 それとも、牧野博士の観察にも落ちがあったのか。
 それにしても、このキツリフネの花序軸と葉の関係は、何を意味するものなのか。
 謎は深まるばかりであるが、迷探偵の探求は、まだ始まったばかりだ。(つづく)

<参考文献>
『山渓ハンディ図鑑2 山に咲く花』(写真・永田芳男、解説・畔上能力/山と渓谷社)
<記事 2014年6月21日>

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