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マムシグサ   蝮草   サトイモ科テンナンショウ属

マムシグサ雄花。こうみるとなかなかかわいらしい
撮影:2013年5月

一見、あまり近づきたくない

和名の由来は、茎(偽茎)の模様がなんとなくマムシを連想させることにあるようだ。花姿にしても、きれいな花弁があるわけでなく、生育場所もなんとなくうす暗いようなところが多いために、万人から愛される植物でないことは確かだ。
 私も最初は、この植物体に手を触れるにも躊躇があり、せいぜい近づいてこわごわ眺めている程度だった。しかし、ある観察会で説明役を仰せつかったのを機会に、マムシグサについて勉強してみたら、これが面白い。

性転換する植物

説明でも一番興味をもたれたのが、性転換する植物というところ。若くて栄養状態が悪い時期には雄の花を咲かせ、花粉を提供しつつ光合成などで栄養を蓄えていく。一定の栄養状態に達した年には、同じ株から雌花を咲かせ、たくさんの実をつける。で、その雌花のとき、地上部が風で折れたり動物に食べられたりして栄養が十分獲得できず、地下の貯蔵庫(球茎)が痩せてしまうと、翌年は雄花を咲かせる。こんな具合に雄と雌をいったりきたりできる植物なのである。

虫には過酷な運命が

植物体の一番上にひゅうっと伸びてヒラヒラしているのは仏炎苞であり、それに包まれて外から見えないところに花がある。花といっても花弁はなく、雄花は雄しべが、雌花は雌しべが花穂になって立っている。
 雄花に入り込んだ虫は花粉を体に付けて下の穴(仏炎苞にできている隙間)から外へ出ていき、雌花に入る。ここで花粉を雌しべに付けるのだが、花の上にはネズミ返しのようなものがあり、下に穴もないので、虫は完全に閉じ込められ、ここで死んでしまう(食虫植物ではないので、死骸はそのままだ)という仕組みになっている。一生懸命花粉を運んでくれる虫さんには、ちょっとひどい仕打ちである。
 興味が出てくると現金なもので、山歩きなどで出会えば、仏炎苞の下の方を触って雌雄を確かめてみたり、苞の先をめくって中の模様を見てみたりと、いまでは、まるでペットのように愛らしい植物になっている。ただ、同行者は、一緒になって触るよりも、眉をひそめて一歩退いている人の方が多いが。
<参考文献>
『山渓ハンディ図鑑2 山に咲く花』(畔上能力・編 山と渓谷社)
『知るほどに楽しい植物観察図鑑』(本多郁夫 橋下確文堂)
<記事 2013年5月29日>

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