柊老人のほろ酔い人生 > 植物との出会いの部屋 > ラショウモンカズラ

HOME | 植物の部屋

ラショウモンカズラ   羅生門蔓   シソ科ラショウモンカズラ属

ラショウモンカズラ
<撮影:2008年5月> ラショウモンカズラ
切り落とされた手がズラリ<撮影:2012年6月>

芥川の「羅生門」とは別

花冠の大きさ(約4〜5センチ)は、シソ科の中でも一二を争うのではないだろうか。山の中で出会うと、ちょっとドキッとする。
 図鑑の解説では「大きく突き出した花を、渡辺綱が羅生門で切り落とした鬼女の腕に例えてこの名があるという」とある。羅生門で知っているのは、芥川龍之介の同名の小説であるが、この小説では怪しげなおばばは出てくるが、鬼ではなかったし、腕を切り落とされる話でもなかった。
 も少し調べてみると、謡曲に「羅生門」というのがあり、それがどうやらこの話の元らしいということもわかった。ただ、あまり舞台にかけられる曲ではないようで、ネット検索ではひっかかってこない。ようやく県立図書館の書庫の中から古い謡曲の本をひっぱり出してきて、「羅生門」を読んでみた。
 時は平安時代。大江山の鬼神を平らげた源頼光の家来である渡辺綱(わたなべのつな)らが酒宴の場で、羅生門に住むという鬼が話題となり、綱が単身乗り込んでそれを退治するという話である。鬼は命までは奪われなかったが、腕を切り落とされて空へと逃げて行った。いってみればそれだけのストーリーで、起伏に乏しく、さほど面白い曲とは思えなかった(ほとんど近年の上演記録がないのもそのせいかも)。

命名者の想像力に脱帽

私が感心するのは、この植物の命名者(誰かは知らない)についてである。確かに独特の花姿ではあるが、これを見て、とくにポピュラーでもない謡曲のなかの鬼の腕を思い浮かべた想像力のたくましさよ。
 おかげで、一度見たら絶対に忘れられない花になった。

<参考文献>
『日本の野生植物 草本V』(佐竹義輔著/平凡社)
『謡曲大観 第5巻』(佐成謙太郎/明治書院)
<記事 2014年5月26日>

#