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 サクライカグマ    桜井カグマ   オシダ科オシダ属

サクライカグマ
 <撮影:2015年12月>

サクライカグマのソーラス
ソーラス <撮影:2015年12月>

このシダに最初に出会ったのは、寒い2月。たしか風の強い日で、すぐそばにある竹林の太い竹がぶつかり合う激しい音がして、肝をつぶしたものだ。
 ちょっと見た時は、よく育ったミサキカグマだろうかと思ったのだ。しかしそれにしては質感が違いすぎる。ミサキカグマはもっと柔らかくてやさしい感じがする。それに第一、ミサキカグマは夏緑性だから、かりに冬に頑張って残っている個体があったとしても、半分しおれかかっているはず。ところがこれときたら、冬の寒風など何するものぞという感じで、(たとえて言えば)面の皮も相当厚そうである。
 写真を撮り、1葉を標本として採集して家に持ち帰ったのだが、なかなか名前にたどりつけない。ほかのことに気をとられていたこともあったが、図鑑などからサクライカグマに行き着くまで1カ月ほどかかってしまった。
その後、栃木県のシダの権威であるT氏に写真を送って教えを乞うたところ、サクライカグマであることが確認された。 そんな経過があって、このシダにはとくに思い入れが深い。
分布は、かなり関東に偏っているが、西日本でもぽつぽつ発見例があるようで、最終的には全国分布のシダになるのかもしれない。
「サクライ」の名は、採集者の桜井半三郎にちなむとのことである。桜井氏というのはサクライソウ(サクライソウ科←ユリ科)にも名を残す著名な植物研究者のようだが、活動時期は20世紀前半ごろのようで、私はこの人について何も知らない。それにしても、発見・採集した植物に自分の名をつけてもらえるというのは、何という幸福な人であろうか。

<参考文献>
『日本の野生植物 シダ』(岩槻邦男編 平凡社)
『しだの図鑑』(光田重幸著 保育社)

<記事 2016年2月16日>

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