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シモツケアザミ  下野薊  キク科アザミ属

シモツケアザミ
猛々しいほどの刺 <撮影:2014年9月>

シモツケアザミ
ちょっと近寄る気にならない <撮影:2014年9月>

シモツケアザミ
全体 <撮影:2014年9月>

私が時々行く山には、湖があり、湿地もある。かなり観光地化しているとはいえ、まだまだ貴重な自然も残されている。そこの自然観察ガイドの方から「このエリアにあるアザミは、トネアザミとノハラアザミだけだよ」と言われていたのだが、ある日、この二つのアザミとはだいぶ雰囲気の違うアザミを見つけた。木道から少し入った湿地の上に生えているので、直接手を触れたりすることができないのがもどかしい。それでも何枚か写真をとって調べてみることにした。
 県が発行している動植物の生息調査の冊子があり、この地域の特集号も出ているのだが、これには写真がなく植物名だけが一覧になっているので、なかなか見当がつきにくい。でも、2種類しかないと言われていたアザミ属のなかに「シモツケアザミ」というのがあったから、これはもしかしたら、と期待を膨らませた。
 しかし、植物に詳しい何人かに聞いても、その名前すら知らないと言われて弱った。
 こうなれば、その調査の冊子に名前の出ている調査員に聞くのが一番だろうと、O氏の職場に写真つきメールを入れて尋ねたところ、まさにそのアザミこそ「シモツケアザミと考えている」との嬉しい回答をいただくことができた。

 実はこのシモツケアザミは未記載種である。未記載種とは、学術論文などで正式に分類学的記載が行われていない生物種を意味する語(「日本語表現辞典 Weblio辞書」)。植物に詳しい人たちが知らないのも無理はないのだ。
 後で知ったのだが、国立科学博物館の「日本のアザミ」には掲載されている。ただ、ここで掲げた写真のようなとげとげしい姿をしていない。これについて、先ほどのO氏は、鹿の食害の圧力を跳ね返すための防御として鋭い刺が発達したのだろうと推測し、キンカアザミにも同様の例があることを教えてくれた。
 このアザミがこの山に定着し始めたころは、鹿に対する対策が進んでおらず、彼らのやりたい放題だったので、何とかして種を残そうとアザミなりに苦心した結果がこの姿なのである。
 私が発見したわけではないのだが、あれこれ調べた末にたどりついたアザミであり、知る人もまだ少ないアザミとして、とりわけ思い入れの深いものになっている。

<記事 2016年9月13日>

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