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テイカカズラ   定家葛   キョウチクトウ科テイカカズラ属

テイカカズラの花
<撮影:2014年5月> テイカカズラ
こんな風にまとわりつく<撮影:2014年6月>

藤原定家にちなむ

この植物の名であるテイカとは、もちろん、小倉百人一首の撰者として名高い藤原定家にちなんだものである。
 はるか昔はマサキノカズラ(真拆の葛)といったが、15世紀に金春禅竹(こんぱるぜんちく)がつくったといわれる謡曲「定家」(当時は「定家葛」といったらしい)によって、この植物をテイカカズラと呼ぶようになったといういわれがある。

ストーカー?

謡曲「定家」では、定家と身分違いの恋に落ちた式子内親王(史実であるかどうかについては諸説ある)の墓にテイカカズラがびっしりとまとわりついている。定家の執心がこのカズラとなったのだ。定家は式子内親王を慕い続け、死後の世界の安寧を守り抜いているつもりであるのだろうが、式子内親王は、そのためにいつまでたっても成仏できず、迷惑がっている風情である。
 まるでストーカーの世界だ。
 たまたまこの地を訪れた旅の僧のまえに、式子内親王の霊が里の女の姿で現れ、読経によって苦しみを解いてほしいと頼み込む。
 ありがたいお経によってテイカカズラのいましめが解ける。式子内親王の霊が墓からあらわれ、お礼にと舞を舞うのであるが、年老いた自分の醜さを恥じてまた墓に戻ってしまう。テイカカズラもまた、もとのように墓にまとわりつく。
 夢の世界はこれで終わり、現実世界には、なにもなかったようにテイカカズラにおおわれた墓がぽつんと残っている。
 さて、式子内親王は、自らの変貌に愕然として絶望の世界に閉じこもってしまったのか、はたまた、定家の(押しつけ的かもしれないが)愛に包まれていることの居心地の良さに気づいて、そこに安住の地を見出して成仏することができたのか。見るものが自由に想像を膨らませることのできる結末である。

プロペラのような花

葉は1〜2センチと小さいが、茎が活発に伸び広がり、樹木や壁面を覆う。花は真っ白で、5枚のプロペラがいまにも回りだすような面白い形をしている。果実は、一見マメ科を思わせるような長い鞘状で、二つに割れると中から長い冠毛のついた細長い種が現れてくる。

<参考文献>
『山渓ハンディ図鑑5 樹に咲く花』(写真・茂木透、解説・城川四郎ほか/山と渓谷社)
『日本古典文学全集 謡曲集1』(小学館)
<記事 2014年6月19日>

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