
岩場にしっかり根を張って <撮影:2013年6月>

アップで見るとなかなか華やか <撮影:2013年4月>

急斜面を彩る <撮影:2013年6月>
「〇〇さんがユキワリソウを見に、連れて行ってくれるって。一緒に行きましょう」と、植物クラブのリーダーに誘われて、やすやすと乗ってしまったのだが、結果は、嬉しさ半分、後悔半分だった。3年前の話である。
どこにでもある花ではない。ある程度の山歩きをしなければたどり着くことはできない。それでも、一度は見たいという思いが勝って、ユキワリソウに会うための山行に加えてもらうことにした。行程の中で一番高いところが1800メートル台。それより高い八間山や至仏山に登った経験もあるのだから何とかなると踏んでの参加だった。
確かに、ユキワリソウにたどり着くまでは、自分でも楽しくなるほど順調だったのだ。
厳しい自然の中で凛と咲く
山頂から次の山頂へと続く道の鞍部にそれはあった。両側はやや鋭く落ち込んだ谷だから、油断をすれば危険な目に合うところだが、山行のリーダーたちがロープを張ったりして安全確保をしてくれたので、参加者全員がさほど怖い思いをすることもなくこの花を見ることができた。
あこがれのユキワリソウは、小群落をつくりながら、切り立った崖地を覆うように咲いていた。空気さえ赤紫に染まるようだ。風も雨も雪も容赦なくおそいかかってくる厳しい自然の中に、こんな清楚で可憐な花が凛として咲いている。奇跡のような情景に時を忘れてしまいそうだったが、リーダーたちに促されて下山の途に就いた。
行きはよいよい…
えらいことになったのは、その途中。膝の周りが少しづつ痛み出し、ついには歩くのもきびしい状態になってしまった。数人の人に荷物を持ってもらったり、励まされたりしながら、歩いては休み、休んでは歩きの超スローペースで必死に登山口まで下りた。
私の体力では無理な山行だったのだろう。多くのみなさんに迷惑をかけてしまった。残念だが、多分ふたたびあの山でユキワリソウを見ることはできないだろう。
サクラソウの仲間の花は、どれもよく似ている。形は同じだが、雌しべの花柱が長い花(長花柱花)と短花柱花の2つの型がある。サクラソウやカッコソウはかなり毛深いのだが、ユキワリソウにはほとんど毛らしいものが見当たらない。それだけに清潔感が際立つ。
<参考文献>
『日本の野生植物 草本V』(佐竹・大井・北村・亘理・冨成編 平凡社)
<記事 2016年6月21日>